森の中で生活し続けた猫の祖先
森の外へ飛び出した犬の祖先
その後、両者の食性の違いを決定付けたものは?
麻布大学獣医学部 教授 太田光明先生のお話です。
読売生活情報誌『リエール』より
犬も猫も共通の祖先を持っています。
それは6500万年前に生息していたミアキスという最古の哺乳類です。
そのミアキスが、何らかの理由で森の外に出て進化したのがオオカミであり、
そのまま森の中で進化したのがヤマネコです。
餌が比較的豊富な森の中と、捕食すべき餌が少ない森の外とでは、食性が大きく異なります。
オオカミは群れを作り、集団で獲物を探して捕らえる必要がありました。
当然、いつもひもじい思いをしていたに違いありません。
そのため、餌にありついたときは一気に食べ、食いだめをしました。
一方、ヤマネコは好きなときに好きなだけ、ゆっくり餌を食べることが出来たのです。
このオオカミとヤマネコから家畜化されたのが犬と猫で、
明らかに食性が異なるのは、その来歴によります。
さらに、犬はトレーニングや狩猟のため、いつも空腹状態を強いられました。
食べ物に対する執着が人間によって強化されたのです。
その忌むべき結果として、
ある種の犬は、与えられた餌を一瞬のうちに食べ、かつ満腹感を示さなくなりました。
Q.犬はなぜいつも餌を欲しがるの?
A.ラブラドールレトリバーやドーベルマンなどの猟犬は、餌を食べるというよりもほとんど飲み込んでしまいます。私達の研究では、これらの犬の食後に満腹感を示さず、交感神経の活性が高いままでした。一方、ジャーマンシェパードや猟犬でもバセットハウンドは、ゆっくりと咀嚼して食べ、食後は副交感神経が活性化し、満腹感を示しました。
この結果から、私達の周りにいる犬によっては、餌を食べても満腹感をもてない可能性があります。そのため、いつも餌を欲しがるのだと言えます。この食性を治す方法として、餌を少しずつ分けていく遅延給餌があります。研究によれば、ジャーマンシェパードらが食べる速度で、ラブラドールレトリバーらに給餌したところ、副交感神経が活性化し、満腹感を示すことがわかりました。
Q.太めの猫は、餌の食べすぎ?
A.猫は餌を好きなときに好きなだけ食べますが、肥満になることはありません。しかし、何らかのストレスがあると交感神経の活性が高まり、副交感神経が低下して、満腹感が得られません。そのため、さらに餌を食べて太めになり、場合によっては肥満になるのです。
ほとんどの飼い主さんは、まさか自分の猫がストレスを感じているとは思っていないでしょう。餌を与えてもまた食べたがるようなら、「ひょっとしたらストレス?」と気にかけてください。この場合のストレスは、多くが精神的なものです。たとえば、猫を3匹以上飼っている、犬と一緒に飼っているなどです。
ひどいストレスになると、逆に食欲不振になります。