
おなかの虫ってどんな虫?
おなかの虫は、犬や猫だけでなく人にも感染し、さまざまな病害を起こします。
愛犬・愛猫、そして飼い主さん自身の健康のために、
おなかの虫の種類や生態について理解しましょう。
おなかの虫は、「内部寄生虫」または「腸内寄生虫」とも呼ぶように、
動物の腸内(主に消化管)に寄生する虫のことをいいます。
主なものに、回虫(かいちゅう)・鉤虫(こうちゅう)・鞭虫(べんちゅう)
瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)などがいます。
ただし、おなかの虫は、ノミなどの外部寄生虫と違って目に見えず
症状が出にくいため、
どうしても感染を見過ごしてしまいがち。
そのため感染したペットが糞便と一緒に虫の卵を排出し、
飼い主さんも知らない間に、
飼育環境を汚染してしまうことがあります。
*主なおなかの虫の種類
おなかの虫は種類によって、大きさはもちろん、感染経路も異なります。
以下に、犬・猫に寄生する代表的なおなかの虫をご紹介します。
虫の卵を口から飲み込んだり、母犬の胎盤や乳汁、母猫の乳汁から
感染する。
動物の腸に寄生し、炭水化物やタンパク質を栄養源にする。
鉤虫大きさ:犬鉤虫2cm以下 猫鉤虫1.5cm以下
幼虫を口から飲み込んだり、皮膚から侵入したり、母犬の胎盤や
乳汁から感染する。
腸の粘膜に咬みつき、血液を吸う。
鞭虫大きさ:7cm以下
虫の卵を口から飲み込むことで感染する。
腸の粘膜に咬みつき、血液を吸う。
瓜実条虫大きさ:50cm以下
幼虫を持ったノミ(中間宿主)などを飲み込むことで感染する。
腸の粘膜に体を固定し、体の表面から栄養分を吸収する。
マンソン裂頭条虫大きさ:最大1~2m
幼虫を持ったカエルやヘビ(中間宿主)などを食べることで
感染する。
多包条虫(エキノコックス)大きさ:0.2~0.5cm
幼虫を持った野ネズミ(中間宿主)などを食べることで感染する。
猫条虫大きさ:最大60cm
幼虫を持ったネズミ(中間宿主)などを食べることで感染する。
おなかの虫の犬・猫への感染
おなかの虫の感染には、卵が偶然に口に入ることで感染する「経口感染」、
虫自体が皮膚を食い破って侵入し感染する「経皮感染」、
母犬・母猫から子 犬・子猫へ感染する「胎盤感染」「乳汁感染」など、
さまざまな感染経路があります。
以下に、おなかの虫の主な感染経路をご紹介します。
例えば犬回虫では糞便中の卵は、
条件が良ければ約10~20日で感染力の高い卵
(第3期幼虫、幼虫包蔵卵)となり、1年以上感染力を持ち続けます。
?母犬・母猫から子犬・子猫に感染する
(胎盤感染・乳汁感染)
おなかの虫は、目に見えないうえに
実際に寄生されていたときの症状も軽いため、
気づくのは大変困難です。
しかし、発見が遅れると、虫卵が飼育環境に広がり、
飼い主さんにも感染するリスクが高まります。
以下に、おなかの虫の駆除対策についてご紹介します。
おなかの虫は、糞便などに混じって肉眼で発見できる虫もいれば、
とても小さく肉眼では発見できない虫もいます。
いずれの場合にしても、寄生が明らかになった段階で
すぐに駆除することが大切です。
【回虫・鉤虫・鞭虫】の場合
おなかの中で成虫になると、糞便と一緒に虫卵が産み出されます。
ただし、とても小さく肉眼ではわからないため、特別な検査(虫卵検査)
が必要です。
【瓜実条虫・猫条虫】の場合
切り離された体の一部(片節)が糞便と一緒に排出されるため、 肉眼で見つけることができます。*検便で陰性だからといって、安心はできません
検便で虫卵が見つかれば寄生は確実ですが、陰性であっても安心はできません。
寄生虫にはプレパテントピリオド※1があり、その期間中であれば感染していても、
虫卵は見つからないからです(これを“見かけ陰性”といいます)。
また卵は、糞便中に均等に分布しているわけではないため、
一般的な直接塗抹法※2と呼ばれる検査方法では、卵が検出できないことが
あります。
※ 1 プレパテントピリオド:宿主に感染後、虫卵や幼虫などを排出するまでの日数。
その期間は寄生虫によりまちまち。
※ 2 直接塗抹法:スライドグラスに生理食塩水を滴下、少量の糞鞭をとって
撹はんし、顕微鏡で確認する方法。
*おなかの虫の駆除対策は定期駆虫がポイント
前述の方法でおなかの虫が見つかったとしても、駆除薬を飲めばペットのおなかは
キレイになります。しかし、飼育環境に散らばった虫卵までは駆除できません。
糞便と一緒に排出された虫卵は、環境条件が良ければ約10~20日で感染力の
高い卵(第3期幼虫、幼虫包蔵卵)となり、1年以上感染力を持ち続けることもあります。
飼育環境が虫卵で汚染されれば、ペットが再感染をくり返す原因にもなるうえ、
同居のご家族(特に幼児がいる場合は危険)にも感染するリスクが高まります。
したがって、おなかの虫の寄生・健康被害からペットと飼い主さんのご家族を守るために
は、駆除薬の定期的な投与(定期駆虫)が必要です。
駆虫薬
ワンちゃん用
錠剤タイプ・フィラリア予防薬と一緒になっているタイプ
ネコちゃん用
錠剤タイプ・滴下タイプ(ネコちゃんは飲み薬が難しいため
滴下式がおすすめです)
引き起こす病害
おなかの虫が犬・猫、さらに人に寄生した際に引き起こす、主な病害(症状)をご紹介します。
おなかの虫は、犬・猫の消化管にすみついて、
消化物を栄養源にしたり腸に咬みついて血液を吸います。
そのためたくさん寄生すると、犬・猫に以下のようなさまざまな病害(症状)を引き起こします。
*犬・猫に引き起こす病害 子犬・子猫は特に注意!
子犬・子猫の場合、検便で発見される前に深刻な症状になり、
命に関わることがあります。
□ 元気がなくなる
□ 動作が鈍くなる
□ 消化不良や下痢を起こす
□ おなかがふくれる
□ 異嗜(いし)症※1を起こす
□ 発育不良を起こす
□ 粘血便※2や貧血を起こす
※1 異嗜症:食べ物ではないもの(糞や石、紙など)を食べる病気のこと
※2 粘血便:粘り気のある血便のこと
*人に引き起こす病害
【犬猫回虫症】
室内や公園の砂場、あるいは犬・猫の毛に付いた回虫の卵が口から入る
ことで感染。
回虫が幼虫のまま内臓や目、皮膚の下、脊髄などに移行して、さまざまな病害を
もたらします。
幼児への感染は重症化しやすく、特に注意が必要です。
また大人でも、大量の卵が入った場合には、重篤な症状を引き起こすことが
あります。
【瓜実条虫症】
瓜実条虫はノミが媒介します。
愛犬・愛猫とスキンシップした時や、愛犬・愛猫に寄生したノミを人が
手でつぶした時、幼児がノミのいるカーペットをなめたりしたときなどに、
はずみで口に入って感染します。
主に下痢などを引き起こします。
【エキノコックス症】(多包条虫症)
北海道に生息するキタキツネ※への寄生で有名ですが、室内犬や猫にも
感染します。
人へは、感染動物の排泄物に含まれる虫の卵が口に入ることで感染します
感染後5~10年は自覚症状がありませんが、幼虫のまま肝臓内で増殖。
次第に重い肝機能障害を引き起こし、放置すれば血流やリンパ流にのって
全身に転移し、90%以上が死に至る恐い病気です。
※札幌周辺のキタキツネの約50%がエキノコックスに感染している
ともいわれています(北海道大学ホームページより)。
旅先でむやみに触ると危険です。
人への感染経路・赤ちゃんや小さい子供さんがいらっしゃるご家庭のかたは